《心惹かれる個性派ワイン》

お月様に梯子を伸ばして今まさに登り始めようとする人。
個性的で意味深なルックスにまず目を惹かれました。
飲んでみて、優しさと柔らかさが特徴的な味わいにも惹かれるものがありました。
いわゆる「ドッカーン」という強いナパ・カベではなく、バランスの取れたちょうど良いミディアムボディ。
飲み疲れることなく、食事中ずっと穏やかに飲み続けられる美味しさなのです。

エクスペリエンス＝体験・経験、というネーミングもちょっと不思議ですが意味があります。
味わいはもちろんのこと、ストーリーにも心寄せられる素敵な1本を体験してください。

《シニア・ソムリエまーちゃんのテイスティング》

濃いめの赤紫。
ブルーベリーやブラックチェリーの黒系果実の甘酸っぱい果実香が豊か。
香りどおりのジューシーな果実味は優しい口当たり。軽く樽の甘やかなニュアンスあり。
決して薄いのではなく、カベルネとしては柔らかで角張っていない感じ。
タンニンも硬くなく強すぎず。バランスの良い酸も尖りなし。
程よいコクは持ちながらも滑らかで、ふんわりした余韻が続きます。
この穏やかな美味しさは、産地も品種も超えたエクスペリエンスならではの個性。

飲み疲れや飲み飽きなく、肉料理全般に美味しく合わせられます。
ご家庭での普段飲みはもちろん、ワインパーティーや手土産にもお薦めの1本です。

《2019年ヴィンテージについて》

2018年に続く非常に素晴らしい出来となった2019年。
やや乾燥気味ではあったが気候的には温暖で、強い熱波も数日のみとなり長い生育期間を取ることが出来た。
完熟した果実から上質の味わいとタンニンを持つワインに仕上がっている。
新年明けに嵐があり、2週間にわたっての大雨のあと平穏な空気が戻った。
この早い時期の湿気を土台に土壌は飽和状態になり、ブドウの木は素晴らしい年になる準備ができた。
夏にはほぼ理想的な気温で青空が広がり、明るい酸を維持しながら熟した風味を得るには理想的な天候だった。

ナパ・ヴァレー5か所の畑をブレンド。より複雑味や個性の豊かさが加わっている。
特に果実の凝縮、タンニンの質、酸味の個性がバランスよくブレンドされている。
・オーク・ノール東側のシルバラード・トレイル沿いにある自社畑。
　（味わいに華やかなアロマ、ハーブのニュアンス、綺麗な酸が特徴）
・ラザフォード（ソフトなタンニンと凝縮した果実味）
・ハウエル・マウンテンの東に隣接するポープ・ヴァレー（堅牢なタンニンを加味）
・ダイアモンド・マウンテン（力強く完熟したタンニンが余韻をひきたてる）

全体の17%を仏産新樽で醗酵・樽熟成。
残りの83%はステンレスタンクで醗酵後、数年使いの仏産樽にて熟成。
両方とも17ヶ月の樽熟成の後、バランスをとってブレンド。
2度の清澄の後ボトリング（新樽率17%）

《偶然の出会い　人生は「エクスペリエンス」》

エクスペリエンス ワインは、キャサリンとトラヴィス・ヴェイルの夢である。
トラヴィスはカリフォルニア州ソノマ・コーストのロシアン・リヴァー・ヴァレーで生まれ育った。
1998年に初めて収穫に携わり、働くワイナリーの光景と音に惚れ込んだ。
名醸造家の娘であるキャサリンはロンドンで生まれ育った。

ふたりは2001年、ニュージーランドを旅行中に出会った。
トラヴィスはマールボロの冷涼な気候の栽培地でさらに勉強を積んでいた。
キャサリンは東南アジアとオーストラリアを6ヶ月間周る旅を終えていた。
2人が乗り合わせたツアーバスは「キウイ・エクスペリエンス・ニュージーランド」だった。
「家から遠く離れた場所での偶然の出会いが、私たちの人生の転機となった。」

すぐに惹かれあった2人は2004年に結婚し、ナパ・ヴァレーに家を構えた。
トラヴィスは家族経営のワイナリーで働き、キャサリンは大手飲料メーカーに就職した。
2009年に買いブドウで初ヴィンテージを造り、その後1991年植樹3haの畑を取得。
2010年、ふたりはブドウ栽培と新しいワインブランドの立ち上げという旅に出た。
駆け出しのワインに「エクスペリエンス」という名前をつけるのは、ぴったりだと思った。
この自社畑を中心にナパ・ヴァレー各地の秀逸な葡萄をトラヴィスの人脈で調達し、ナパ・ヴァレーらしい味わい・プライスポイントに合ったワインを創り出していく。二人もワインもより多くの「経験」を積んでこれからも成長していく。

キャサリンとトラヴィスは3人の娘に恵まれている。
彼らのビジネスは、必要なときにみんなが協力し合うまさに家族のようなものだ。
一家の信条は、目的地にこだわらず、旅を楽しむこと。
人生は、受け入れ、探求し、経験するための素晴らしい機会の連続である。
これこそが、エクスペリエンス を現在も将来も特別なワインにする本質なのだ。

(文章：佐野 雅子)